国家公務員給与アップ「理解得られぬ」10年ぶり見送りへ
10月25日20時41分配信 産経新聞


 政府は25日、国家公務員給与の引き上げを求めた平成19年度人事院勧告の完全実施を見送る方向で調整に入った。完全実施が見送られれば平成9年以来、10年ぶりとなる。民間給与が伸び悩む中、公務員の給料を引き上げることは世論の理解を得られないとの判断で、省庁幹部にあたる指定職公務員の昇給凍結を軸に調整を進める。
 人事院は8月、国家公務員一般職の19年度給与について、初任給や20歳代の若手を中心とした月給を0・35%、ボーナスを0・05カ月分引き上げるよう勧告した。引き上げの勧告は6年ぶり。勧告を完全に実施したら、約450億円の国庫負担が必要で、地方公務員にも適用されれば計約1380億円に上る。
 これに対し、政府は18日に給与関係閣僚会議を開いたが、「厳しい財政事情の中で国民の理解が得られるか」とする否定的な意見と、「人勧制度は公務員に与えられていないスト権に代わるものだ」とする意見とが対立し、結論を得ることができなかった。
 町村信孝官房長官は25日の記者会見で「最近は製造業の大企業以外のボーナスは軒並み前年よりダウンしているし、地方に行くと公務員の給与水準が高すぎると思っている人たちもいる。国・地方の財政も厳しい」と説明。さらに「公務員に対する世の中の風当たりの厳しさをどう受け止めるかということもある」とも指摘し、守屋武昌前防衛事務次官らの接待疑惑が発覚した事情を考慮すると、完全実施は厳しいとの見解をにじませた。
 今後、省庁間の調整や公務員労組との交渉を経て、月内に決着を図る方針だ。
 政府はまた、退職後に不祥事が判明した場合、いったん支払った退職金を自動的に返納させる規定の新設も検討に入った。政府高官は25日、「今までの規定を超えるものができるかどうか、専門家の意見を聞きたい」と述べた。